このページでは、現物分割と代償分割、換価分割、共有分割、遺産分割の遡及効について説明しています。
相続開始後、相続分は民法の規定や遺言があれば遺言によって相続分割合が決まります。しかし、民法の相続分は単なる割合であり、どの不動産を誰々に相続云々と遺言書に記載されていない限り、遺産分割協議などの相続開始後一定の手続きを経て具体的な取得財産を決めなければいけません。これを「遺産分割」といいます。
ちなみに混同しやすい用語として、「財産分与」があります。民法768条に規定されてる「財産分与」とは、婚姻中に築いた財産を、離婚の際に財産関係を清算するための財産分割です。
遺産分割の基準
民法第906条
遺産の分割は、遺産に属する者又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してしなければなりません。
遺産分割の実行
民法第907条(分割の実行)は、遺言による分割禁止(民法908条(遺言による分割の指定又は禁止))のない場合の遺産分割の実行について規定されています。遺産分割の実行後、遺産分割の方法により分割されます。
分割の方法
現物分割
(民法258条②)・・・遺産を現物のまま相続分に応じて分割する方法で、分割の原則的方法。一定の大きさの土地を相続分に応じて文筆して分割します。
代償分割
(家事審判規則第109条)・・・共同相続人の1人又は数人が相続により財産の現物を取得し、その現物を取得した者が他の共同相続人に対し債務を負担する分割方法
換価分割
(家事審判法第15条の4、108条の3)・・・共同相続人の1人又は数人が相続により取得した財産の全部又は一部を金銭に換価し、その換価代金を分割する方法
共有分割
・・・共有分割は各相続人の持分を決めて、もしくは、相続分割合に従って共有する方法
※共有分割は不動産を相続分割合によってきちんと分割できますが、後々、相続分が継承され相続人が増えるとその不動産を分割することがさらに難しくなります。実際、不動産(更地)で分母が何万分の何という共有持分の謄本を見たことがあります。
遺産分割の遡及効
これまで遺産分割の基準や方法をご説明しました。
ではこの遺産分割の効果はどこまで遡(さかのぼ)るのか?
上の図(黄色い四角)のように遺産分割の成立には、遺産分割協議が成立(協議分割)する場合、家庭裁判所の審判により成立(審判分割)との2種類があります。
遺産分割が成立すると、相続開始の時に遡ってその効力を生じ、 各相続人が分割によって取得した個々の相続財産は、 相続開始の時点で、被相続人から直接承継したものとして取り扱われます。これを遺産分割の遡及効といいます。
ただし、遺産分割の遡及効が認められる範囲は、 分割した遺産に限られます。
例えば、代償分割によって取得した遺産については遺産分割の遡及効が生じますが、 代償金支払債務や換価分割による代価については遺産分割の遡及的効力は生じません。
さらに遺産分割前に一部の共同相続人に対する債権者が特定の相続財産に対し、その共同相続人の有していると考えられる持分を差し押さえたりいている場合には、その第三者の権利を害することはできません。これは第三者を保護するために規定されています。
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